今回は、保育園選びの参考になるように、株式会社こどもの森の思想やこだわりを調査、分析してまとめました。
保育園を比べるとき、立地や費用といった条件はわかりやすい一方で、その園が何を大切にしているのかという理念は、つかみどころがなく感じられるものです。けれども、運営者の考え方は日々の保育の端々ににじみ出ます。前回は株式会社こどもの森の規模や歴史といった輪郭を整理しましたが、今回はもう一歩踏み込んで、同社が掲げる保育の思想を第三者の視点から読み解いてみます。公式に語られている言葉を手がかりにしつつ、それが実際にどういう意味を持つのかを冷静に考えていきましょう。
キャッチフレーズに込められた発想の転換
こどもの森が全社で共有しているとされるのが、自分の子どもを預けたい園をつくる、という考え方です。一見すると当たり前のフレーズに思えますが、よく読むと発想の出発点が利用者目線に置かれていることがわかります。
保育施設の理念は、子どもの健やかな成長を願うといった抽象的な言葉で語られることが少なくありません。それに対してこどもの森の表現は、運営する自分たち自身が親だったら預けたいと思えるか、という問いを基準にしています。提供する側ではなく、受け取る側の立場から園のあり方を考える姿勢が、この短い言葉に表れているといえるでしょう。実際に運用される保育がその理想に届いているかは個別に見る必要がありますが、判断の物差しを利用者側に置いている点は、方針として明快です。
既存の保育への問題意識
同社の代表メッセージを読むと、この理念がどんな問題意識から生まれたのかが見えてきます。代表は、従来の保育園の多くが保護者に過剰な持ち物を求めたり、あれもだめこれもだめと制約を課したりして、働く家庭に寄り添えていないと指摘しています。さらに、保育や教育をほとんど行わない託児所のような園がある一方で、保護者の受けを狙って習い事ばかりを詰め込む園もあるとし、どちらも質の高い保育とは言えないという見方を示しています。
この語り口からは、こどもの森が既存の保育のあり方へのアンチテーゼとして自らを位置づけようとしていることが読み取れます。預かるだけでも、習い事で飾り立てるのでもない、その中間にあるバランスの取れた保育を目指すという立ち位置です。
第三者として補足するなら、こうした問題意識自体は近年の保育業界で広く共有されつつあるものでもあります。保護者の負担軽減や子ども主体の保育は、多くの事業者が掲げるテーマになっています。そのため、ここで語られている方針が同社だけの独自性かというと、必ずしもそうとは言い切れません。ただ、創業の早い段階からこうした視点を打ち出してきたのであれば、その先見性は評価できる部分でしょう。
六つの柱で語られる取り組み
こどもの森は、自社の保育を六つの観点から説明しています。保育と教育、安心と安全、給食と食育、家庭へのサポート、園づくり、そして外部評価です。それぞれが具体的に何を指すのかを、順に見ていきましょう。
保育と教育の面では、子どもは自ら育つ力を持っているという考えのもと、一人ひとりの違いを認めながら自発的に活動できる環境を整えるとしています。大人が一方的に教え込むのではなく、子ども自身の主体性を引き出す方向性です。
安心と安全については、多数の系列園で蓄積した知見をいかし、乳幼児突然死症候群を防ぐための体動センサーをいち早く導入したことが挙げられています。多くの施設を運営する規模をリスク管理に還元している例といえます。
給食と食育では、減農薬米や添加物を抑えた食材へのこだわりに加えて、食への興味を育てる活動が紹介されています。家庭へのサポートに関しては、布団など家庭から持参する荷物を極力減らすという、保護者の負担軽減に直結する工夫が語られています。前述の問題意識が具体的な施策に落とし込まれている部分です。
園づくりでは、子どもが落ち着けるコーナーや空間づくりへの配慮が示され、外部評価については、保護者の評判をもとにしたランキングで系列園が上位に入った実績が紹介されています。
理念と現場のあいだにある現実
ここまで同社の掲げる思想を整理してきましたが、第三者の立場として一つ押さえておきたいことがあります。それは、立派な理念がそのまま現場のすべてに反映されるとは限らない、という保育業界全般に共通する現実です。
施設数が多いほど、理念を全園に均一に浸透させるのは難しくなります。同じ会社の園であっても、施設長や職員の顔ぶれによって雰囲気や運営の細部は変わります。家庭からの持ち物を減らす方針のように仕組みとして定着しやすいものもあれば、子どもの主体性を尊重する保育のように、現場の力量に左右されやすいものもあります。理念は園選びの出発点として有用ですが、最終的には見学や説明会を通じて、目の前の園がその理想をどこまで体現しているかを自分の目で確かめることが欠かせません。
外部評価で高い評判を得ているという点も、客観的な裏づけとして参考になる一方で、評価の対象になったのが系列園の一部である可能性には留意が必要です。会社全体の平均的な質と、特定の優良園の質を混同しないようにしたいところです。
まとめ ── 理念を入り口に、現場を確かめる
株式会社こどもの森の保育思想は、自分の子どもを預けたいと思えるかという利用者目線の問いを軸に、既存の保育への問題意識から組み立てられています。保護者の負担軽減や子ども主体の保育、安全への投資など、語られている方針には一貫した筋が通っています。
こうした理念は、園を選ぶうえでの有力な手がかりになります。ただし理念はあくまで入り口であり、本当に大切なのは、その考え方が日々の保育としてどう実現されているかです。会社が掲げる言葉を理解したうえで、気になる園があれば実際に足を運び、自分の家庭の価値観と照らし合わせてみる。その両方を組み合わせることが、納得のいく選択につながるはずです。
