これまでの記事では、株式会社こどもの森の規模や理念、事業の広がりといった全体像を見てきました。とはいえ、会社の特徴は具体的な施設に足を運んでこそ実感できるものです。今回は、同社が運営する施設の一つである目黒区のこどもの森児童館を取り上げ、そこから同社の施設づくりの考え方を読み解いてみます。一つの事例を掘り下げることで、これまで抽象的に語ってきた特徴が、現場でどんな形になって表れるのかが見えてくるはずです。
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自治体から運営を任された民間児童館
こどもの森児童館は、東京都目黒区の目黒本町にあります。開設されたのは令和2年、つまり2020年の4月のことです。バス停の清水庚申のすぐ前という立地で、公共交通でアクセスしやすい場所に位置しています。
この施設を理解するうえで欠かせないのが、児童館でありながら民間企業が運営しているという点です。児童館は本来、地域の子どもが無料で自由に使える公共性の高い施設で、自治体が直接運営することも少なくありません。そうした施設の運営を、目黒区が株式会社こどもの森に任せているわけです。前の記事でも触れたように、行政が民間に施設運営を委ねるには、その事業者への一定の信頼が前提になります。自治体での児童館運営の実績があることが、この受託につながったと考えられます。
利用にあたっては、対象が0歳から18歳未満の子どもとその保護者で、利用料は無料です。初回のみ登録が必要で、その後は受付で名前を記すだけで使えるという、地域に開かれた運営になっています。営利企業が運営していても、児童館としての公共性はしっかり保たれている形です。
夜8時まで開く、中高生も通える居場所
この児童館の最も大きな特徴は、開館時間の長さと対象年齢の幅広さにあります。開館は午前9時から午後8時まで。一般的な児童館が夕方には閉まることを考えると、夜8時までというのはかなり踏み込んだ設定です。
特筆すべきは、夕方以降の時間帯を中学生と高校生に向けて使えるようにしている点です。具体的には、午後5時を過ぎてからは中高生を主な対象とする運営になっています。乳幼児や小学生が中心になりがちな児童館にあって、思春期の子どもの居場所まで意識しているのは珍しい取り組みです。
中高生が放課後や夜に安心して過ごせる場所は、都市部では意外と限られています。塾や習い事でもなく、かといって家でもない、そんな第三の居場所を公的な施設として用意することには大きな意味があります。目黒区がこの施設を中高生にも対応した拠点として位置づけ、紹介動画まで作って発信していることからも、行政側がその役割に期待していることがうかがえます。
多彩な設備が示す施設への投資
設備の充実ぶりも、この児童館を語るうえで見逃せません。建物にはオープンライブラリーや乳幼児室に加えて、体育館、音楽スタジオ、ダンススタジオ、キッチンスタジオが備えられています。さらに体育館にはボルダリングウォールが常設されているといいます。
これだけの設備が一つの施設に集まっているのは、児童館としてはかなり手厚い部類です。音楽やダンスのスタジオは、楽器やバンドの練習をしたい中高生にとって貴重なスペースになりますし、ボルダリングは体を動かしながら挑戦する楽しさを味わえます。キッチンスタジオがあれば、調理を通じた活動や食育にもつなげられるでしょう。乳幼児から高校生まで、それぞれの年代が思い思いの過ごし方を見つけられるよう、空間が設計されているのです。
ここには、前の記事で触れた園づくりへのこだわり、つまり子どもが楽しく安心して過ごせる空間を用意するという同社の姿勢が、児童館という形でも表れていると読むことができます。保育園で培った環境づくりの発想が、対象年齢を広げた施設にも応用されているのかもしれません。
保育園・学童との一体運営という強み
この施設のもう一つの特徴は、児童館単独ではなく、学童保育クラブと保育園を併設した複合施設になっている点です。一つの建物の中に、乳幼児を預かる保育園、放課後の小学生が過ごす学童、そして地域に開かれた児童館が共存しているわけです。
これは、こどもの森が保育から就学後まで幅広く手がけているという事業の特徴が、一つの場所に凝縮された例といえます。子どもの成長に合わせて利用するサービスは変わっていきますが、同じ施設の中で連続的に支えられる可能性があるのは、家庭にとって心強い面があります。運営する側にとっても、異なる年代の子どもや保護者と日常的に関わることで、地域の子育てを面で支える拠点になり得ます。
第三者として見たときの留意点
ここまで前向きな特徴を多く挙げてきましたが、第三者の立場として冷静に補足しておきたいこともあります。
まず、こうした充実した設備や長い開館時間は、この目黒区の施設に特有のものである可能性が高いという点です。同社が各地で運営する児童館や学童のすべてが、同じ水準の設備や運営になっているとは限りません。一つの優れた事例をもって、会社全体の標準だと受け取るのは早計でしょう。
また、施設の充実度と日々の運営の質は別物だという視点も大切です。立派なスタジオやボルダリングがあっても、それが子どもにとって使いやすく、安心して過ごせる雰囲気で運営されているかどうかは、実際に利用してみないとわかりません。設備の情報はあくまで入り口であり、現場の空気感はやはり足を運んで確かめるのが確実です。
まとめ ── 一つの施設から見える会社の姿
目黒区のこどもの森児童館は、自治体から運営を任された民間児童館として、夜8時までの開館や中高生への対応、多彩な設備、保育園や学童との一体運営など、いくつもの特色を備えた施設でした。そこには、これまで見てきた同社の理念や事業の広がりが、具体的な形となって表れています。
会社の全体像を頭に入れたうえでこうした個別の施設を見ると、その会社が何を大切にしているのかがより立体的に理解できます。同時に、一つの事例がすべてを代表するわけではないという冷静さも忘れずに持っておきたいところです。気になる施設があれば、この記事のような情報を入り口にしつつ、ぜひ自分の目で確かめてみてください。
